『2つの出会いと2つの別れ』

はじめまして。アートデンタルクリニック院長の横山です。
当院の情報や私の日々思う事、感じた事、考えなどを踏まえ、今年からブログを行う事にしました。内容は医学的な事は勿論、少しでも皆様のためになる様な内容をこころがけますのでどうぞよろしくお願い致します。

初ブログは医学的な事というよりも昨年後半で特に心に残った2つの出会いと2つの別れについて感じた事を書きました。

 

『2つの出会いと2つの別れ』

昨年は大変多くの患者様に来院して頂き、非常に多くの事を考えさせられる一年だった。

特に目についた事がインプラント治療のトラブルケース。

インプラント(人工歯根)の埋入位置、深さ、角度にはじめ、インプラント周囲の粘膜(歯茎)、被せ物とインプラントを接続する土台(アバットメン ト)の形、被せ物の形、噛み合わせの状態への配慮などなど…これら全てが伴ってはじめてインプラント治療の完成となる。成功では無い。やはり10年経って 特に問題が生じていなければ、初めて成功と言えるのではないかと思う。今年は特に他医院さんでのインプラントのリカバリーが増えそうだ。

昨年12月はインプラント手術のラッシュであった。

一番記憶に残っているのが当院のビルの大家さんの御友人との出会い。

大学病院でインプラント治療が失敗に終わり、どうしたらいいかという事で御相談にいらした事である。

大家さんは当院で以前3本のインプラント治療を行い、快適に過ごしているとありがたいお言葉を頂戴した。御友人の方のインプラント治療の設計は3本の歯を2本のインプラントで支える設計であった。

よくある光景であるが問題はその先だった。専門用語で歯冠インプラント比という言葉があるが、インプラントの長さと歯の頭の部分の比率を指す。イン プラントの長さの2倍近くの歯の長さに設計されていた。俗に言う『頭でっかち』の歯である。その長い歯3本を2本のインプラントで支えるのでは…。歯冠イ ンプラント比(通常の歯の場合は歯冠歯根比という)は医学的には最低でも1対1(必ずしもこれを守らなければという物ではないが目安として)の状態には もっていきたい。勿論それが難しければ柱の本数を増やしてカバーするしかない。
今回はインプラントサイズを可能な限り長くし、2本で無く3本で(費用はインプラント2本分で)支える設計とした。言い方が悪くなるかもしれないが、どん な手を使ってでもこの御友人の方を治して差し上げたかった。噛める喜びで人生に活力を!半年以上も片側の歯が無く見た目も勿論、最近反対側で噛むと痛む様 になってきて食事もつまらない、とおっしゃっていた。静脈内鎮静下でインプラントの埋入手術を行い、左上に3本と副鼻腔への増骨手術を行い約30分で手術 を終了した。非常に喜んで頂いたが、まだまだ治療は始まったばかり。正直、大学病院でお手上げだと言われた方への治療は非常に重圧がかかる。しかしながら それが良い緊張感になり、自分のレベルUPにも繋がる。この方の人生に携わった以上、最後まで気を引き締めて精一杯努力したい。

ワインの輸入販売を行っているENOTECA、常務執行役員の患者さんも本当に良い出会いだった。若くして殆んど説明もなく奥歯2本を抜歯され、恐 怖心、不信感から長年歯医者に通えなかった方だった。やはり歯医者嫌いは歯医者自身が作っている。自分で自分の首を絞めているのだ。昨年秋に来院され、多 くの時間をカウンセリングに費やし一緒に作戦会議を行った。毎回約1.5時間という貴重な時間を頂戴し、インプラント治療を含めた口腔内全体の治療を今年 春までには完結させたい。ようやく折り返し地点にきた。治療の合間にはワインの話を聞かせて頂き、差し入れのワインで一気に赤ワインの虜になった。安くて 美味い!さすがプロだ!また本当に楽しそうにワインの話をされる。年末年始で同じ赤ワインを大人買いしてしまいました。

良い出会いは必ず人間を成長させる。患者さんから学ぶ事が非常に多く、昨年は治療技術も磨いたが、それ以上に考え方や新しい物への挑戦もあった。今年も治療技術は勿論、医学書だけでなく様々な分野の本を読み、人間として向上して行きたいと思う。

今年のスタートはどうだったか…新年早々インプラントの手術が続いたと同時に他医院さんで以前行ったインプラントが歯周病菌に侵され残念ながら撤去 となった。この患者さん、虫歯は全く無いのだがとにかく中等度の歯周病、場所により重度の歯周病があり、喫煙もなかなかのものである。3年前、インプラン トの状態確認を含め、歯周病の治療を受けたいとの事で新横浜の方からわざわざ訪ねてきてくださった。当時もインプラントの状態が良くなく、あと2年もつか どうかとお伝えした。某有名な売れっ子ミュージシャンの全国ツアーを周っているため、かなり多忙な方で、今回1年以上もメンテナンスが開いてしまった。久 しぶりの再会であったが私も御本人様も新年早々非常に悔しい思いをした。今後の治療はしっかりとカウンセリングをしてこの方の御希望やライフスタイルに一 番合う治療を行っていきたいと思う。インプラントを撤去するという心と身体に傷を負わせた以上、しっかりとフォローしていきたい。

最後にこの場をおかりして…私の古くからの患者、Nさん。以前勤務していた綱島駅前歯科医院で出会い、私が開院後も3ヶ月に一度厚木から応援に来て 下さっていた。昨年末、御主人様から喪中葉書きが届いた。Nさんに不幸があったとのことでした。未熟な歯科医師であった私を『どこまでもついて行くから頑 張ってね』と一家でよく応援してくださっていた。1度全ての歯を治療してそれを10年以上全く問題も無く使って頂いた。『先生手際も良いし上手よ!』未熟 だった私に最高の御褒美をくださり、多くの患者さんを御紹介いただいた。もう一度会って心からお礼を言いたい…今はそれしか考えられない。

恩師、香川大学口腔外科教授、松井義郎先生。昨年槍ヶ岳で滑落し、お亡くなりになった。昭和大学口腔外科勤務時代、インプラント、口腔癌、歯科手術 など様々な手術を一緒に行い、今の自分を作ってくれた方の一人。よく学会発表に行ったなあ…。『横山君~、論文英語で書いて海外のに掲載しよ~。』『横山 君~、君なら全部任せても大丈夫だよね~』人生で一番働き、正直辛かった思い出が殆どだ。ただ彼の多くの患者さんや、色々な仕事を自分に任せてくれ期待も してくれていた。それが分かった時、本当に嬉しかった。恩師のやり残した分まで自分が活躍したい、心からそう思う!

 

2つの出会いと2つの別れ。忙しさを理由に最近行っていなかったから、今年の目標に一つ加えたい。お墓参り…

 

出会いあれば別れもある。人生これの繰り返しでみな平等。別れは本当に辛い。今年は1回でも多く親の顔を見に行こう。